Description:... 「俺が男でも好きって言えるの? 」松岡洋介はちょっとしたストレス解消のつもりで美しく着飾り、女のフリをして男たちの視線を集めて楽しんでいた。ある日、ナンパ男に男だと気づかれて散々な目に遭った松岡が、惨めな姿で道端で途方に暮れていると、優しく傘を差しかけ助けてくれた男がいた。同じ会社で働いている、冴えない、無口、不器用で鈍いと評判の寛末基文だった。松岡は女性と思われたまま寛末と会ううちに、寛末の誠実さや優しさ、一緒にいると癒される人間性に惹かれていく。そんなとき、寛末から「好きです」と想いを打ち明けられる。──寛末という人間は好きだ。しかし自分は男。女性ではない。寛末の好きな女は存在しない。もう女装はしない。松岡は女の姿で会わないと決心するが、寛末が異動になったと知って……。=================================見つめ合う瞳は、恋人同士みたいだった。そんなにかっこいい男じゃないのに、見つめているうちにどんどん魅力的に思えてきて、自分の勘違いに眩暈がした。「十二時を過ぎた」ぽつりと男が呟いた。「終電は出たよ。もう帰れない」=================================
「俺が男でも好きって言えるの? 」
松岡洋介はちょっとしたストレス解消のつもりで美しく着飾り、
女のフリをして男たちの視線を集めて楽しんでいた。
ある日、ナンパ男に男だと気づかれて散々な目に遭った松岡が、
惨めな姿で道端で途方に暮れていると、優しく傘を差しかけ助けてくれた男がいた。
同じ会社で働いている、冴えない、無口、不器用で鈍いと評判の寛末基文だった。
松岡は女性と思われたまま寛末と会ううちに、
寛末の誠実さや優しさ、一緒にいると癒される人間性に惹かれていく。
そんなとき、寛末から「好きです」と想いを打ち明けられる。
──寛末という人間は好きだ。
しかし自分は男。女性ではない。寛末の好きな女は存在しない。
もう女装はしない。
松岡は女の姿で会わないと決心するが、寛末が異動になったと知って……。
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見つめ合う瞳は、恋人同士みたいだった。そんなにかっこいい男じゃないのに、見つめているうちにどんどん魅力的に思えてきて、自分の勘違いに眩暈がした。
「十二時を過ぎた」
ぽつりと男が呟いた。
「終電は出たよ。もう帰れない」
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