改訂版 国民国家と憲法
Description:... 石川 晃司(著)
A5判 232ページ
価格2,100円+税
ISBN978-4-86251-374-8
第1部は、近代の国民国家の形成との関係で、憲法や平和の問題を捉えた論説である。国民国家と憲法は切り離すことはできないが、国民国家自体が永久不変なものではなく、また現在さまざまなところから揺さぶられている以上、憲法もとうぜん変化をこうむらざるをえない。こうした現状では、「そもそも」という根本的な問いがますます重要になってきていると考える。
第2部は、日本国憲法を取り上げている。もちろん、日本国憲法の授業として必要な知識を盛り込んだが、条文の解釈に必要以上にこだわることをしていない。憲法が私たちの考え方や生活の中にどのように息づいているのか、現実の政治や社会の運営にどのように反映されているのかにある。それがどのように具体化されているかを見ることが必要であろう。
目次第 Ⅰ 部 [論説]国民国家・憲法・戦争
1 人間・共同体・歴史 2
2 近代という時代 3
(1)近代というプロジェクトの開始 4
(2)絶対王政から市民社会へ 6
3 国民国家(ネイション・ステイト)の成立と原理 8
(1)国民国家の構成原理 8
1)自由主義
2)人権の定立
3)立憲主義(法の支配)
4)民主主義 (国民主権)
5)法の下の平等
6)権力分立
(2)ネイションの形成 16
1)E.ゲルナーの議論
2)B.アンダーソンの議論
(3)幻想の共同性と憲法体制―普遍性と個別性の矛盾 21
1)ヘーゲルの憲法論
2)マルクスの幻想共同体論
4 政治社会の変容 29
(1)市民社会から大衆社会へ 29
1)産業革命の進展
2)参政権の拡大と福祉の充実
3)国家の変容―立法国家から行政国家へ
4)19世紀型憲法から20世紀型憲法へ
(2)大衆社会の問題点と民主主義 33
1)大衆社会の問題点
2)大衆社会の危険性
5 国民国家と戦争 36
(1)戦争機械としての国民国家―排除の論理と戦争の不可避性 36
1)暴力装置(軍隊、警察など)の独占
2)ナショナリズムと世界大戦
(2)「正義の戦争」は存在するか 39
6 国民国家のゆらぎ 40
(1)「冷たい戦争」をどう評価するか 40
(2)エトニーの反乱 41
(3)グローバリゼーションとボーダーレス化 46
7 現代の戦争と平和の模索 48
(1)現代において、戦争は如何にして可能か(不可能か)? 48
1)主要国家間の戦争の不可能?
2)戦争の変質
3)「宗教」の解体
(2)平和の模索1―EU(ヨーロッパ連合)の試み 51
(3)平和の模索2―日本国憲法第9条の開明性 52
第 Ⅱ 部 日本国憲法論
第1章 日本の近代化と大日本帝国憲法 62
(1)大日本帝国憲法制定の背景 62
封建制解体から近代集権国家への急激な転換、絶対的な権力
中枢確立の必要性、自由民権運動による憲法制定への圧力、
対外的体裁
(2)憲法制定の経過 64
(3)大日本帝国憲法の構造と特色 65
1)絶対主義的要素(国体論)
万世一系、総攬者としての天皇、天皇大権
2)立憲主義的要素
議会制度、大臣助言制、司法権の独立、人権保障
3)憲法外機関の存在
軍部、元老・内大臣、枢密院
(4)大日本帝国憲法の二元性とその展開 70
第2章 日本国憲法の成立と基本原理 72
(1)日本国憲法の制定 72
1)制定の経過
2)制定経過における「実質」と「形式」の矛盾
3)「押しつけ憲法論」は妥当か
(2)日本国憲法の構成と特質 77
1)日本国憲法の構成と内容(大日本帝国憲法との比較で)
2)日本国憲法の三原則
第3章 国民主権と象徴天皇制 82
(1)国民主権 82
1)国民と国籍
国籍、皇族
2)主権者としての国民
主権概念の形成、主権の意味、国民が主権をもつとはどういうことか
国民主権理念の具体化
(2)象徴天皇制の意義 85
第4章 平和主義と憲法9条の意義 88
(1)憲法9条の独自性と先進性 88
(2)憲法9条のなし崩し的な形骸化 92
アメリカの対日政策の変更、自衛隊の創設と日米安全保障
条約の締結、経済成長のアリバイ、
自衛隊合憲発言(1994年 社会党村山内閣)、
自衛隊イラク派遣(2003年 自民党小泉内閣)、
集団的自衛権行使容認の閣議決定と法整備
(2014~15年 自民党安倍内閣)
第5章 基本的人権 100
(1)基本的人権の保障 100
1)人権の分類
2)基本的人権の一般原則
基本的人権の享有、個人の尊重、人権に伴う責任
3)人権を享有する主体
外国人、天皇と皇族、法人、特殊の法律関係
4)法の下の平等
平等とは何か、差別的取り扱いの禁止
5)国民の義務
教育を受けさせる義務、勤労の義務、納税の義務
(2)精神的自由権 110
1)内面性精神的自由権─思想と良心の自由
2)外面性精神的自由権─信教と表現の自由
信教の自由
表現の自由(集会・結社の自由、言論・出版の自由、通信の秘密)
3)学問の自由
(3)経済的自由権 119
1)居住・移転・職業選択の自由
2)財産権の保障
(4)身体的自由権 122
1)奴隷的拘束・苦役の禁止
2)適正手続の保障
3)罪刑法定主義と推定無罪
4)被疑者の権利
逮捕令状主義、不法に抑留・拘禁されない権利、捜索・押収令状主義
5)刑事被告人の権利
公平・迅速・公開の裁判を受ける権利、証人審問権・証人喚問権、
弁護人依頼権、自己負罪の禁止、自白の証拠能力の制限、
自白の補強証拠、一事不再理・二重処罰の禁止
(5)社会権 130
1)生存権
2)教育を受ける権利
3)勤労の権利と労働基本権
勤労の権利、労働基本権
(6)国務請求権 135
裁判を受ける権利、請願権、国家賠償請求権、
刑事補償請求権
(7)参政権 136
1)選挙の意義と原則
2)現代日本の選挙区・代表制
(8)新しい人権 141
プライバシーの権利、知る権利、環境権
第6章 国 会 144
(1)国会の地位と性格 144
国民の代表機関、国権の最高機関、唯一の立法機関
(2)国会の組織と二院制 148
1)国会の組織
2)二院制の意義
3)組織上の差異
4)機能上の差異―衆議院の優越(跛行的両院制)
(3)国会の議事・議決 151
立法過程、定足数、会議の公開、両院協議会、一事不再議の原則、
国務大臣の国会への出席
(4)国会議員の地位 154
国会議員の資格の得喪、議員の権能、議員の特典
(5)国会の会期と衆議院の解散 156
1)会期の種類
2)会期の開始と終了
3)衆議院の解散
4)参議院の緊急集会
(6)国会と財政 158
1)租税法律主義
2)国費の支出と国の債務負担行為の議決権
3)決算の審査
(7)議院の権能 159
1)議院自律権
組織自律権、運営自律権
2)委員会制度
3)国政調査権
第7章 内 閣 162
(1)行政権 162
1)行政権の最高機関としての内閣
2)行政権と行政委員会
(2)議院内閣制 165
1)議院内閣制の原則
内閣の責任、衆議院の内閣不信任、内閣総理大臣の指名
内閣の総辞職、国務大臣の資格、国務大臣の議院への出席
国務報告権
2)議院内閣制と官僚
議員提出法案と内閣提出法案、行政国家化と官僚
(3)内閣の組織と権能 171
1)内閣総理大臣の権限
国務大臣の任免、国務大臣の訴追の同意、内閣の代表
法律および政令の署名
2)国務大臣の権限
3)内閣の権能
法律の執行と国務の総理、外交関係の処理、条約の締結
官吏の事務の掌理、予算の作成と国会への提出、政令の制定
恩赦の決定
第8章 司 法 178
(1)司法権の意義 178
(2)戦後日本の裁判制度の特徴 178
司法権の独立・強化、裁判権の司法裁判所への統一、
最高裁判所裁判官の国民審査
(3)違憲審査権と統治行為論 180
1)違憲審査権とは何か
2)違憲審査権の主体
3)違憲審査権の対象
4)違憲審査権と条約
5)司法消極主義と統治行為論
(4)最高裁判所と下級裁判所 185
最高裁判所、高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所、簡易裁判所
(5)裁判の原則 186
司法権の独立と裁判官の身分保障、公開主義、審級制(三審制)、
裁判官の中立と当事者の対等、自由心証主義
(6)検察審査会と裁判員制度 191
1)検察審査会
2)裁判員制度
第9章 地方自治 198
(1)地方自治の本旨 198
1)住民自治
2)団体自治
(2)地方公共団体とは何か 200
(3)地方公共団体の機関 200
1)議会と地方公共団体の長
2)住民
住民の憲法上の権利、住民の地方自治法上の権利
(4)地方公共団体の権能 203
1)自治行政権
2)自主立法権
(5)地方公共団体の先進的政策 206
付録 日本国憲法 208
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